人事評価の目的

「人事評価(考課)制度の最も重要な目的は何か」と質問すると「社員の給料を
正しく決める」と答える人(経営者、管理者、人事責任者)が大部分ではなかろうか。
この時点でその企業の人事評価制度が機能不全に陥るのは目に見ている。
尤も、適正な給料の決定も人事評価の目的の一つではあるが、最重要では決してない。
本来の目的は「人材の最大活用をはかり、企業目的を達成させること」である。

実例を示してみよう。ある中堅の企業を訪れた時のことである。経営企画担当の役員が
「業績が伸びないで困る。社員のモチベーションも低い。何とかならないものか。」と
嘆いた。詳しく聞くと「業容拡大のため、キャッシュフロー経営を重視しており、
経営方針や中期経営計画にも目標として掲げてあるが、一向に達せされていない」と
言うのである。そこで「キャッシュフロー改善のために社員が取るべき行動・姿勢が
人事評価表に明示されていますか?」と訊いてみた。役員は怪訝そうな顔して、
「売上や、業務改善の項目はあったが、特にキャッシュフローに特化した評価項目
はなかったと思う」と答えた。営業部門と管理部門の評価表を見せていただいたが、
教科書に載っているような一般的な評価項目の羅列である。これでは経営の想いが
実現されるわけはない。

キャシュフロー改善を目指すのであれば、社員は今まで違った行動が必要になる。
売上思考だった営業マンも、売買契約条件、代金回収方法、取引先選定などで
キャッシュフローを意識した動きに変えねばならない。

経営と人事評価制度

人事評価は一般的に人事マターだと捉えれているが、私は経営マターだと捉えている。
つまり経営目的・目標を達成するために社員に求める行動・姿勢を定めたものが
人事評価だと。しかし、経営者は評価項目を人事部門に任せてしまって、評価制度
そのものに殆どの興味を示さない。しかし人事評価項目は経営の社員に対するメッセージと捉えれば、
経営者は評価表項目が自分の期待する人材像とかなり異なっているのに気づく筈だ。

本来、社員に期待する行動・姿勢は、「経営理念(社是)→ミッション→目標→役割」から
導かれるものであり(この際、ビジョン、バリューの話は置いておいて)、これらが
連鎖することにより、個人の行動と経営理念が初めて結びつくのである。
「人事評価は経営理念と連動していなくてはならない」と説く人は結構いるが、
実際にそれらを結びつけて制度を展開・運用している例は見たことがない。

当方ではこの経営と評価の連鎖を「ミッション(一般で言うものと少し異なる)」と「機能」という
キーワードを用いて、実現している。別のページでミッションについて、また戦略的人事評価表の
作成方法について述べるつもりであるのでそれを参考にしていただきたい。