ミッションとは

経営理念型の勉強をされた方には「ミッション」は耳タコになっていると思われるが、ここで述べる
ミッションは従前のものと少し異なるのでご理解いただきたい。ここでの「ミッション」は、
概念的な話ではなく、組織における組織変革、行動改革、制度設計等を実現させるための
キーワードになるものである。全ての経営活動はミッションに収斂すると言って過言でない。

説明はなかなか難しいが、一応次のように定義しておきたい。
・中長期的な視点における使命や社会貢献の想いを明文化したもの
・トップが示す経営の羅針盤
・組織の存在する理由、役割。誰にどんな価値を提供するのかを定義したもの
・社員を結束させ、一方向に向かわせる大義名分
・社員、経営陣の行動、意思決定の際の判断基準となるもの

一言で言うと、「経営理念」より具体的(下位概念)だが行動規範などより抽象的
(上位概念)なもので、行動の範囲、方向性を決めるもの、と捉えればよい。

 

ミッション欠如の組織

コンプライアンスだガバナンスだと叫ばれているが、企業では不正が行われ、その都度
大きな問題になっている。粉飾決算、検査データの改ざん、労基法違反・・・枚挙に遑がない。
組織おける意思決定、経営行動には様々の要素が入り込む。正しい決算を行えば赤字になり、
存続が危うくなる。検査を正しく行うには多くの手間がかかり、納期に間に合わない。
残業をさせないと顧客からの要請に応えられず、仕事がもらえなくなる。
このように”正しい”ことを行うことによって大きな犠牲を払わなくてはならない場合、
それを避けるがために悪魔の囁きに負けてしまうことがある。不正への誘惑に完全と立ち向かうには
正しい行動を取るための絶対的な基軸が必要である。この絶対的に守らなくてはならないものが
ミッションである。上記にあるように、ミッションは組織の存在理由を示したものであるから
ミッションを守れなくなった組織はもはや存在価値はない。

不正を起こし、社会の批判にさらされた企業は守るべき基軸がなかったかと言うと
そんなことはない。ミッションや、行動規範などしっかりあり、内部統制の仕組み、
体制など完璧なものがあるにも関わらずである。

正しい行動を喚起するためには、①わかりやすいミッション、②遵守する姿勢・意識、③遵守状況の
モニタリングが絶対に必要である。立派なミッションだけあっても、他の要素がなければ、問題は
起きる。これらが欠如している組織は問題が起きる前に状況を是正すべきだ。

ミッションのもう一つの側面

前項では、好ましくない行動の抑止力としてのミッションの役割を述べた。実は好ましい行動を
促進させる要素としてのミッションがある。典型的なミッション連動型仕組みとしては「人事評価」
である。人事評価制度はミッションを達成するための人材活用・育成のシステムと考えると
わかりやすい。また、ミッションに基づいた評価がなされ、運用されるようになると、
自分が評価されることが会社や社会の発展につながっていると実感されモチベーションが高まる。
何れにせよ、ドラッカーも言っているように、ミッションを定着させるには評価との連動が
不可欠だ。

さらに、ミッションが浸透すると皆が難しい仕事に進んでチャレンジするようになり、変化する
環境の中での日々の行動にもブレがなく、自信を持って仕事ができるようになる。心の中に
ミッションを持っている社員とそうでない社員とは成果が大きく異なるものだ。

ミッションに基づく経営活動

ミッションを基にした経営活動、制度設計には様々なものがある。以下はその典型的なもので
今後別記事で取り上げてみたい。
・戦略的組織設計
・部門の機能(役割)の明確化
・人事制度構築
・戦略的人材育成
・戦略的スキルマップ
・目標管理との連動
・職務権限規程
・職務機能分掌